Biデータサイエンスは、統計的アプローチを用いてお客様のビジネス課題の本質的な解決に貢献します。ここでは、ある企業様の顧客アンケートを題材に、複雑な回答データから顧客の潜在的な価値観とビジネス成果の関係性を解明し、マーケティング戦略の再構築に繋げた事例をご紹介します。
【お客様の課題】
ある消費財メーカー様は、新商品の開発とマーケティング戦略の立案のために大規模な顧客アンケートを実施しました。しかし、集計されたデータは、顧客の属性や単一の評価項目に関するものであり、複数の質問項目間の複雑な関係性や、それが最終的なビジネス成果(例:購買意欲、ブランドへの好感度)にどのように結びついているのかを明確に把握できていませんでした。より効果的な施策を打つためには、顧客の回答データに隠された深い洞察を発見することが喫緊の課題でした。
【Biデータサイエンスによるデータ分析の実施】
ご提供いただいたアンケートデータには、顧客の回答がテキスト形式のカテゴリカルな値として含まれていました。単純な集計では見過ごされがちな、回答間の多面的な関係性を明らかにするため、正準相関分析と多変量分散分析(MANOVA)という、高度な多変量解析手法を組み合わせて用いました。これらの手法により、膨大なデータの中から、顧客の回答が示す潜在的な傾向を客観的かつ定量的に捉えることが可能となりました。
分析プロセスの詳細
- データクレンジングと前処理
アンケートの生データには、テキストベースの回答が含まれていました。まず、これらのカテゴリカルデータを、統計分析に適したダミー変数(0または1の数値)に変換する前処理を丁寧に行いました。これにより、複雑なテキストデータも分析に組み込むことが可能となりました。 - 正準相関分析による回答項目間の関連性分析
顧客の「評価項目群」と「購買行動意欲群」といった複数の質問項目セット間で、最も強い相関関係を探索するために正準相関分析を実施しました。この分析により、多岐にわたる顧客の回答の中から、ブランドに対する好感度や購買意欲に最も影響を与える評価項目群の組み合わせを特定しました。 - 多変量分散分析(MANOVA)による要因の解明
特定の回答(例:「購入したい」と回答した顧客)が、他の複数の評価項目(例:「デザインの評価」や「価格の評価」)の得点に統計的に有意な差をもたらしているかを検証するために、多変量分散分析を用いました。これにより、どの回答が、全体的な顧客評価のパターンに大きな影響を与えているのかを明らかにしました。
【統計学的に配慮した点・工夫】
- ダミー変数の多重共線性の回避
カテゴリカルデータをダミー変数に変換する際、変数間で多重共線性(互いの相関が強すぎる状態)が発生する可能性があります。このリスクを避けるため、事前に変数間の相関をチェックし、分析に歪みが生じないよう配慮しました。 - MANOVAの前提条件の厳密な検証
多変量分散分析は、データの正規性や分散共分散行列の均一性といった特定の前提条件を満たす必要があります。分析に先立ち、これらの条件が満たされているかをシャピロ-ウィルク検定やレベン検定などを用いて厳密に検証しました。 - 分析結果の慎重な解釈
正準相関分析では、元のデータに含まれる値の種類が多い場合、相関係数が強く出る傾向があります。この注意点を踏まえ、結果の解釈は単なる数値だけでなく、ビジネス上の示唆と照らし合わせながら慎重に行いました。
【分析結果から得られた示唆】
本分析により、これまで見えていなかった「顧客の評価項目群」と「購買意欲」の間に、強い相関関係があることが明らかになりました。特に、顧客が新商品の「パッケージデザイン」を高く評価していることが、他のどの要因よりも「購買意欲」に強く結びついていることが証明されました。この結果に基づき、企業様は新商品のマーケティング戦略を、機能性だけでなく、視覚的な訴求を重視したものへとシフトすることができ、より効果的な投資配分が可能となりました。
【補足】
※本事例は実際の分析プロジェクトをベースにしていますが、守秘義務の観点から題材や内容を改変し、顧客およびプロジェクトが特定されないように配慮して掲載しています。
