Biデータサイエンスは、統計的アプローチを用いてビジネス課題の解決に貢献します。ここでは、ある企業のマーケティング施策を題材に、特定の顧客グループ間における効果の差をノンパラメトリック検定で分析し、意思決定に繋げた事例をご紹介します。
【お客様の課題】
あるBtoBソフトウェア企業様は、主要な顧客層である「中小企業向け」と「大企業向け」の2つのマーケティングチャネルに対して、それぞれ異なるコンテンツ施策を展開していました。しかし、両チャネルの施策が「製品の利用頻度」や「顧客満足度」に与える影響に統計的な差があるのかを客観的に把握できていませんでした。
特に、「大企業向け施策」が「中小企業向け施策」に比べて、製品の継続利用を促す上で本当に有効なのかを定量的に検証することが求められていました。
【Biデータサイエンスによるデータ分析の実施】
ご提供いただいた各チャネルの顧客ログ(利用頻度、アンケート回答など)を基に、両グループのデータを比較しました。通常の検定手法であるT検定を検討しましたが、各グループのサンプル数が少なく(合計17件)、データの分布が正規分布に従わないことが判明しました。そのため、分布に捉われないノンパラメトリック検定の一つであるウィルコクソンの順位和検定を用いることが適切と判断しました。
分析プロセスの詳細
- データの分布と正規性の確認
T検定の前提条件を満たしているかを確認するため、各チャネルの「製品利用頻度スコア」と「顧客満足度スコア」のデータの分布を視覚的に確認しました。両チャネル間で分布の形状が異なることが明らかになりました。 - 適切な検定手法の選定
分布の偏りやサンプル数の少なさを考慮し、正規分布を前提としないウィルコクソンの順位和検定の適用を決定しました。これは、T検定のようなパラメータに依存しないため、データが特定の条件を満たさない場合でも利用できる頑健な手法です。 - グループ間の有意差検定
ウィルコクソンの順位和検定を実施した結果、「製品利用頻度スコア」および「顧客満足度スコア」のいずれにおいても、両チャネル間に統計的に有意な差は認められませんでした。
【統計学的に配慮した点・工夫】
- ノンパラメトリック手法の適用
サンプル数が少ない場合や、データが正規分布に従わない場合でも、信頼性の高い結果を得るためにノンパラメトリック検定を選択しました。 - 仮説検定の慎重な解釈
P値が0.05を上回ったことから、統計的な有意差は認められないと判断しました(製品利用頻度スコア P=0.63、顧客満足度スコア P=0.81)。この結果は、「新施策が従来施策より明確に優れているとは言えない」ということを示唆します。
【分析結果から得られた示唆】
本分析により、今回のデータセットにおいては、「大企業向け施策」が「中小企業向け施策」と比較して、製品利用頻度や顧客満足度の向上に統計的な有意差を生んでいないことが明らかになりました。この結果から、両チャネルに同等の投資を行うか、あるいはより詳細な顧客セグメントを対象とした施策の再設計を検討する必要があるという結論に至りました。
【補足】
※本事例は実際の分析プロジェクトをベースにしていますが、守秘義務の観点から題材や内容を改変し、顧客およびプロジェクトが特定されないように配慮して掲載しています。
