Biデータサイエンスは、統計的アプローチを用いてビジネス課題の解決に貢献します。ここでは、ある企業のマーケティング施策を題材に、効果測定をRMSTモデル(平均到達時間モデル)を用いて行い、意思決定に繋げた事例をご紹介します。
【お客様の課題】
ある消費財メーカーでは、新しい販売チャネルを活用したマーケティング施策を展開していました。しかし、従来型の施策と比較して「顧客定着率や購買継続率が本当に改善されているのか」を定量的に把握できていませんでした。これまでの評価は短期的な売上や広告効果に依存しており、長期的な顧客行動に基づく効果検証が不足していました。
特に、「新施策は従来施策と比べて顧客継続率に有意差を生むのか」を明らかにすることが経営層から強く求められていました。
【Biデータサイエンスによるデータ分析の実施】
ご提供いただいたデータには、数千名規模の顧客行動ログ(購買の有無・時期、解約や離脱のタイミングなど)が含まれており、これを「施策導入群」と「従来群」に分けて比較しました。通常のCox比例ハザードモデルでは「時間依存の効果」が安定しないため、比例ハザード性が成立しないケースでも適用可能なRMSTモデルを採用しました。
分析プロセスの詳細
- 比例ハザード性の検定
まず、各施策群における「購買継続率(生存曲線)」についてSchoenfeld残差を用いた検定を実施しました。その結果、新施策群と従来群の間で比例ハザード性が成立しないことが確認されました。 - RMST単変量解析
顧客行動データを基に、施策群間の購買継続期間の差をRMST単変量解析により評価しました。その結果、両群間に統計的に有意な差は認められませんでした。 - RMST共変量調整解析
年齢層、購入履歴、利用チャネルなどの顧客属性を共変量として調整した解析を実施しました。共変量を導入しても、新施策と従来施策の間に顧客継続率の有意な差は確認されませんでした。 - 有意変数の限定モデル
共変量のうち統計的に有意なもの(例:購買回数の多寡など)のみを採用した調整解析も行いましたが、同様に群間に有意差はありませんでした。
【統計学的に配慮した点・工夫】
- 比例ハザード性の事前検討
Coxモデルが不適切なケースを排除するために、必ず比例ハザード性を検証しました。 - 多重共線性の確認
共変量同士の相関が強すぎないかをVIFで確認し、多重共線性の影響を排除しました。 - 複数パターンの調整解析
「全変数を共変量として導入するモデル」と「有意変数のみを導入するモデル」の両方を比較し、結果の頑健性を担保しました。
【分析結果から得られた示唆】
本分析により、新施策は全体的な顧客継続率において従来施策と有意な差を示さないことが明らかになりました。一方で、一部の属性を考慮すると傾向の違いが見られる可能性もあり、今後はより細分化した顧客層ごとの追加検証が有効と考えられます。
これにより、企業は「全顧客への一律展開」ではなく、特定顧客層へのターゲティングを強化する戦略へとシフトできることが明確になりました。
【補足】
※本事例は実際の分析プロジェクトをベースにしていますが、守秘義務の観点から題材や内容を改変し、顧客およびプロジェクトが特定されないように配慮して掲載しています。
